遺産分割について

遺産分割については,本当に良く揉めることが多いですね。
揉めるいくつかのケースがありますので,ざっくりと書いてみます。

1 長兄単独相続希望のケース
良くあるパターンは,最近は少なくなっているとはいえ,長男が,自分が跡継ぎだからといって
遺産を全部持って行こうとして,その弟や妹たちが納得できないというもの。
「自分は親父から『自分が死んだら全部お前にやる。』と言われていたんだから,親父の意思を尊重する」
などと述べることもあります。

しかし,それは通らない話です。
親父さんとして,本当にそう思っていたのであれば,なんとしても生前,遺言を作成しておくべきでした。
有効な遺言がなく,口頭で「全部お前にやる」と言った言わないという話が出ても,無理です。

長男であろうと二男であろうと,長女であろうと末の弟妹であろうと,
原則として子ども達全員が均等に遺産を分けることになります。

家督相続制度が廃止された現行民法になって,はや数十年が経っている現在においても
長男優先主義,家督主義がはびこっていることに正直なところびっくりします。

しかし,おそらく,平等に遺産を相続するという法律があることは知っている。
でも,全相続人で合意すれば,自分が全て相続できることも可能である。
(それはたしかにそうです。合意があれば,の話ですが。)。
だから,弟妹たちに納得してもらおう。説得しよう。
そういう流れなんだと思います。

ただ,この考えは,弟妹たちが反対すれば破たんしますので,次善の策を講じなければなりません。

2 無報酬介護・寄与分主張のケース
また,これは本当にかわいそうな話なのですが,
老齢の親を引き取り,何十年も介護をして,自分たち家族は本当に疲弊した。
しかし,遠方に行ってろくに面倒も見ないどころか顔も出さないきょうだいが
「平等」の相続分を主張してきた,というケースもあります。
ネットでいろいろ調べて「寄与分」という概念を知ったので,これを主張したい,というケース。
親の介護をしたということは,原則として寄与分の増額には繋がりません。
平等ということになります。
「じゃあ親の面倒を見ただけ損ではないか」というお気持ちも,ある意味もっともです。
できれば,そういった状況も加味して遺産分割協議が整えばいいのですが・・・

面倒を見てくれた子どもに遺産を多く渡したいというのは,親として一般的な気持ちかもしれません。
そうであれば,やはり先ほど述べたように,なんとしても生前,遺言を作成しておくべきでした。

3 遺産の分割方法で揉めるケース
遺産のすべてが預貯金なら,機械的に分配できますので,
遺産分割で揉める危険はそのほかに比べれば低いのですが,
不動産やら何やらがたくさんある場合は,なかなか揉めることが多いです。
すべての不動産を相続人で均等に共有というのは一番平等なのですが
2世代,3世代後,まるでねずみ算のように相続人が増えてしまった場合,
売るに売れない土地になってしまいます。
誰がどの土地を相続するのか,誰がどの遺産を相続するのか,
それで揉めるパターンも数多くあります。

=========
遺産分割というのは,揉めた場合には1年以上かかることも決して珍しくありません。
ですから,まず,自分が生きているうちに遺言を書いておくことが何より大切です。

もし,遺言がなく揉めている場合は,おそらくきょうだい間で心情的・感情的対立が激しいのだと思います。
感情をどこまで裁判所に持ち込むかというのは悩ましいところもありますが,
感情なしの人間というのもあり得ないわけですから,
法律ではどうなるか,ということを知っておいた上で,判断すべきことだと思います。

なお,遺産分割で揉めた場合は,遺産分割調停が有用です。
裁判所の調停委員さんはいろいろな肩書の人がいらっしゃいますが,
遺産分割調停では,弁護士や税理士等の専門士業が
調停委員として参加していることも少なくありません。
それでも,調停委員は中立的立場にいなければなりません。
どちらか一方の味方になることはできませんので,
必要があれば,自分の味方としての代理人弁護士に依頼して
弁護士とともに調停に行くべきでしょう。

ただ,私も含め,多くの弁護士は,正直なところ,税金関係や登記関係に疎いです。
餅は餅屋で,税理士や司法書士が精通しているところです。
税理士や司法書士と提携している弁護士に依頼すると,スムーズかもしれません。

先ほども述べましたが,遺産分割調停は年単位で時間がかかることが珍しくありません。
調停は月に1度程度とはいえ,心理的にものすごいエネルギーを費やす方が多いので,
これが長く続いてしまうと,大変疲れてしまいます。
調停や事件との適度な距離感を持つことが大事だと思います。

平成27年9月関東・東北豪雨災害の被災者支援のために

平成27年9月9日から11日にかけて,関東地方から東北地方の広い範囲で豪雨により,
堤防の決壊,越水等が起こり,近年まれに見る水害が発生してしまいました。
お亡くなりになってしまった方々に対しましては心よりお悔やみ申し上げますとともに,
被災された方々には,心よりお見舞い申し上げます。

弁護士は自然災害に対しては無力です。
弁護士バッジがあったからといって,現実に発生しようとしている(あるいは発生している)地震や津波,水害などを止めることはできないからです。
しかし,被災者の方々・被害者の方々は,災害により,いつもどおりの生活ができなくなってしまっています。
その方々の「生活する権利」が侵害されている状況であることは間違いなく,そうであれば,弁護士の役割も決して軽くありません。

たとえば,法律相談を一つ取ってみても,災害時の法律相談には,精神的支援機能,
パニック防止機能,紛争予防機能,情報整理提供機能,立法事実集約機能といった,
いろいろな機能があるとされています。

要するに,困っている人たちのお話を伺って,法的アドバイスを行うことが,まずは相談者の精神的支援になりますし,
パニックの防止や紛争予防にもなります。
さらに,被災者の方々には,情報が全く届かなかったり,逆に,とんでもなく膨大な情報が届いてしまい,
被災者の方々も大変困ってしまうことが多い中,大変な災害で麻痺してしまっている行政に代わり,
その相談者に必要な情報を整理して提供するということができます。
さらに,災害法制は発展途上ですので,既存の法律では対処が難しい問題が新たに浮かび上がることも多々あります。
そういうときは,多数の法律相談で皆さんが同じように悩んでいることを集約して,自治体や国に届けて
条令や法律等を改正してもらうために働きかけるということもできます。

弁護士・弁護士会の役割は決して軽くないのです。

しかし,こういった弁護士の災害復興支援活動は,古くても雲仙普賢岳,阪神淡路大震災以降に始まったもので
日弁連(日本弁護士連合会)も,ようやく災害復興支援が人権擁護活動であるという理解をしてくれたという段階です。

弁護士の活動のノウハウは,阪神淡路大震災を経験した兵庫県弁護士会,中越・中越沖地震を経験した新潟県弁護士会,
そして東日本大震災を経験した岩手弁護士会,仙台弁護士会,福島県弁護士会などがその都度身につけてきたもので,
これらの弁護士会は,自分たちの得た経験を惜しみなく他の弁護士会に伝えてくれています。

私は,群馬弁護士会に所属していますが,日弁連の災害復興支援委員と
関弁連(関東弁護士会連合会)の災害対策PT委員を兼ねています。
この委員会では,先人達の経験やノウハウが毎日のように結集しており,最先端の知識が集まっている場所です。

日弁連災害復興支援委員会が持っている情報を生かして,群馬弁護士会も,
たとえば昨年2月の豪雪被害や本年の前橋・伊勢崎突風被害で被災者支援活動を行ってまいりました。

そして,私も,関東弁護士会連合会の災害対策PTの委員として,先日,茨城県弁護士会に伺い,
日弁連が持っている情報(弁護士会としてどう動くべきか等)をお伝えしてきました。
茨城県は東日本大震災の被災地でもあり,その活動は素晴らしいものでした。
今回もいち早く災害対策本部を設置し,会員一丸となって取り組んでいらっしゃいます。
私が話した内容も,実際は既に被災地の先生方は重々承知のことばかりだったと思いますが
少しでもお役に立つ部分があれば幸甚です。

災害は一瞬で「当たり前の暮らし」を奪っていくものですが,その後の復興は一瞬でできるものではありません。
インフラの復旧は,「生活」「地域」の復旧・復興とは別だからです。

弁護士にしかできない被災者支援も多数あります。
息の長い活動になると思いますが,私としても,できるだけのお手伝いができればと考えています。

どの時点で弁護士に依頼するか?

法律相談では,ご相談の内容について,法的分析と見通しをお伝えするとともに
ご依頼をいただくこともあります。

そこで,どの時点で弁護士に依頼するか,というのがよく話題に上がります。

結論は一律ではなく,具体的なケースによって千差万別だと思います。

たとえば,離婚。

当事者間で離婚の話し合いをして,一番揉める点,たとえば親権や慰謝料について
だいたいの合意ができているとかといった場合は,その交渉の時点で弁護士を入れると,
かえって事が荒立ってしまうこともあり,離婚ができなくなってしまうとか,
そういった危惧があるなら,当事者間での話し合いを継続してもいいと思います。
そして,弁護士は,たとえばその話し合いの中で,で知りたいことがある等という場合に
スポットで法律相談をする,といった使い方も考えられます。

一方,交渉してもどうにもならないことが明らかな場合,交渉の段階から弁護士に依頼するということもよくあります。
当事者間の力関係で,自分がどれだけ頑張っても対等な立場での交渉は難しいという場合などです。
DV(精神的虐待を含む)等を原因とする離婚の場合はそういった傾向が顕著です。

よく「調停は弁護士を入れた方がいいですか?」と聞かれます。

調停の待合室での感覚では,弁護士を付けず,当事者だけでやっている調停の方が多いように思います。
通常の離婚調停であれば,弁護士に依頼する費用も考えて,まずは自分でやってみて,
その中で,たとえば調停委員さんが向こうの言い分を重く扱い,こちらの言い分をあまり聞いてもらえないとか,
相手が弁護士を入れたからこちらも,というようなことで弁護士に依頼することが多いようです。

訴訟になったら,弁護士に依頼するのが一般的でしょう。

不貞などの慰謝料請求は?

ご自身で進めるのであれば,いろいろな思いのある中で,極めて冷静に事を進める必要があります。
しかし,どうしても気持ちが入ってしまい,必要以上に大事になってしまうこともあります。
内容証明郵便を1通送れば自動的に満額回収できるということは滅多にありません
(全くないわけではありませんが)ので
最初から,代理権のある弁護士に依頼するのが良いのではないかと私は思っています。

では,たとえば交通事故はどうでしょう。

これも,最初の段階から弁護士に依頼することもあります。
しかし,一般的には,相手方保険会社から示談の提案が来て,その金額に納得がいかないとか,
あるいはその金額が正しいのか知りたいという段階でのご依頼が圧倒的に多いです。
休業損害,後遺障害認定についてのご不満等もかなりありますね。

ただ,たとえばまだ治療中なのに相手方保険会社が治療を打ち切ってくれと強行に言い出したり,
あるいは,相手方保険会社の担当者からの電話連絡が怖くて対応を弁護士に任せたいという方もいらっしゃいます。
その場合は,相手方保険会社からの示談の提示の前にも受任することがよくあります。

では,債権回収は??

金融機関などは自分で差押えなどを行えますが,一般の方はそうではないことが通常です。
そして,確定判決や公正証書がない限り,いきなり差押えというのはできません。
保全手続もありますが,余計にお金がかかります。
ですから,差押えなどの前提として,裁判などを起こさなければなりません。

日本の民事訴訟の大原則は,弁護士に委任せず,本人でも裁判を起こせますし,
自分自身で訴訟活動を行うことができます。
とはいっても,やはり餅は餅屋ではないですが,弁護士に依頼した方が円滑でしょう。
もっとも,債権の存在や金額について争いがない場合には,訴訟以外の手続を,本人が行うことも十分可能です。

・・・というように,いろいろと状況に応じて変わるのですが,一番最悪なのは
本来弁護士に依頼すべきだったのに,それをしなかったばかりに思わぬ結論になり,
それが決まってしまった後に弁護士に相談する,という事態です。

弁護士は高いという印象がかなり世の中にあり,それは残念ながら間違いない場合が多いと思います。
(私の場合も,多くの弁護士と同様離婚は着手金で30万円+消費税,別途成功報酬はいただきますし。)
ただ,法律相談は無料にしている弁護士も多いようですし(私は無料相談はしていませんが),
有料の場合でも,多くの法律事務所では5000円~10000円+消費税程度で相談を受けることができます。

ですから,自分自身で,まだ自分だけでできるとか,そういった判断をせず,
できるだけ早い段階で,まずは弁護士に一度相談してみてアドバイスを受け,
そのとき,どの時点で弁護士に依頼すべきかということもあわせて相談してみることがいいと思います。