「子どものために,離婚します。」
そうおっしゃる方はなかなかいらっしゃいません。
「むしろ逆なのでは?」と思われるのではないでしょうか。
子ども,特に未成年の子どもを抱える方々が,離婚をするかどうかで最後まで考えるのは,
「子どものために,離婚を思いとどまった方がいいのではないか」ということだと思います。
子どものためには両親が揃っていた方がいいのではないか。
子どもが独り立ちするまで,自分が我慢して,耐えて耐えて頑張る方がいいのではないか。
お子様への愛情の深い方は,常にそのお気持ちを持ち続けていると思います。
また,ご自身の中でその葛藤を乗り越えてパートナーに離婚を切り出しても,
「子どものために,仮面夫婦でもいいから,もう少し我慢してくれないか。」
といわれてしまうことも多く,また悩みは振り出しに戻る・・・
そして,自分だけが我慢していく中で,どんどん時間が過ぎていく。
非常に多数の方が抱えている・・・というか,
子どもを抱える万人共通の悩みといっても過言ではない悩みなのではないでしょうか。
「子どものためには離婚をせずに,両親が揃っていた方がいい」。
一般論としては,聞こえのよい言葉です。
しかし,本当にその言葉は,全てのケースにおいて当てはまるのでしょうか。
確かに両親は揃っている。
しかし,両親は顔を合わせれば子どもの前でも喧嘩ばかり。
あるいは,子どもの前でも冷え切っている関係を隠すことができず,会話もない。
夫婦間の会話もないし,ただ,同居しているだけ。
この状況は,果たして子どもさんの精神状況にプラスでしょうか。
愛情いっぱいの母子家庭・父子家庭。
時々お父さん(お母さん)がやってきて,親子で楽しく過ごす。
そういう関係が構築できるとして,それよりも,
毎日喧嘩ばかりの両親を見て成長させる方が幸せでしょうか。
いろいろな家庭の現状があると思います。
「子どものため」というのは,何よりも優先されるべき事項です。
ただ,「本当に子どものためになるのは,どういうことか。」というのは
・パートナーとの関わり合い(割り切って,子どもの前では笑顔でいられるか,協力して子育てができるのか,etc.)
・子どもの年齢・精神状況(既に父親・母親との信頼関係ができあがっていて,精神的にもそれなりに自立しているか。)
・離婚後の面会交流が充実したものにできるか
といった様々な要素を考慮した上で,
「離婚をしない言い訳」としての「子どものため」を排除して,じっくり考える必要があるでしょう。
少なくとも,子どものことを考えて離婚は控えるという結論に達したとしても,それは,
「子どものために離婚しない方がいい」という原則論だけでゴリゴリ突き進むのではなく,
今後,子どもの前ではいい父親,いい母親として,また,仲のいい家庭を演出できる覚悟を双方が持てた。
そういう中での結論であることが望ましいのではないでしょうか。