遺産相続ではまず「情報」の共有を

遺産の相続問題というのは,当事務所で非常に多く取り扱っている分野の一つです。

「相続」といっても,

・相続人は誰で,法定相続分はどのような割合なのか。

・被相続人(亡くなった方)に遺言はあるのか

・遺産にはどんなものがあるか(不動産,預貯金等の債権だけではなく,債務も)

・どのように分けるか

といったように,様々な視点から検討する必要があります。

特に大きく揉めることが多いのが「遺産にはどのようなものがあるか」「どのように分けるか」です。

今回は,「遺産にはどのようなものがあるか」という点に関連して,紛争の激化や長期化を防ぐために,どのようなことが有効か,ちょっと書いてみます。

☆遺産を把握している方はどんどん開示しましょう☆

亡くなった方の遺産を,同居している方などがしっかり把握していて,どこの銀行にいくら,どこの証券会社にいくら,といったリストを作れる場合が圧倒的に多いのですが,それを他の相続人にも同様に開示してくれるかどうかは,残念ながら,また別の問題です。

どのような遺産があるのか全く知らされないまま「いくら渡すから判子押せ」「凍結された口座から金を引き出すために判子押せ」などと言われる方も非常に多いです。

「生前,自分は親の面倒を見られなかったけど,自分の代わりに見てくれたから」とか,「これから家と墓を守っていくんだから」とか,そういった理由で,ご自身で納得して同意することは全く問題ありません。

ただ,正しい情報を得られないまま,判子を押せというのは受け入れられない。そういった相談は非常に多いです。

どのように分割するかの前に,まずは正しい情報の開示を求め,客観的な情報をもとに協議することが必要です。

遺産を管理している側の相続人も,早期解決を望むのであれば,他の相続人から情報開示を求められたら「自分で調べろ」と突き放すのではなく,客観的で正しい情報を提供すべきでしょう。

それでもどうしても開示されないというのであれば,相続人であれば,ある程度の遺産調査は可能です。私もよく,そのような方の代理人として,絨毯爆撃のように,亡くなった方の住所地の近隣金融機関全て(と場合によってはインターネット専業の金融機関)に問合せをしています。そこから思いもよらぬ遺産が見つかることもあります。

仮に預貯金や証券口座等を隠していたとしても,引き出すにあたっては相続人全員の同意が必要です。隠しておくメリットはありません。

☆生前の預貯金引出は何に使ったか記録しておきましょう☆

また,「父が死亡する直前に,相続人の一人に,ものすごい勢いで預金を引き出された」という相談もよくあります。葬儀費用として現金にしておいてくれ,と本人に言われて引き出したという方もいらっしゃいますし,預金の凍結前に,葬儀などにかかる費用を事前に引き出しておいた,という方もいらっしゃいます。

葬儀費用を遺産から出してよいのか,喪主が負担すべきなのかという争点はありますが,少なくとも,引き出した相続人の方は,公明正大な手続を行っていることを他の相続人に示すため,しっかり帳簿をつけておく必要があるでしょう。

☆まとめ☆

今述べてきたような内容は,「情報」を共有することの重要性,というようにくくれるとおもいます。「財産を分ける」ためには,その財産がどのようなものなのか,相続人全員で共有しておかないと,話が進まないことが多いです。特に,相続人間の信頼関係がそう強くない場合,必要な情報を提供してくれない方に対して,他の相続人は不信感を強めてしまいます。

そうすると,後々気が変わって情報提供しても「まだあるんだろう。」「何で今まで出さなかったんだ。隠匿が済んだからだろう。」などと,疑心暗鬼は解消できず,争いが解決しないこともあります。

情報はできるだけ早く,正確なものを共有するということが,早期解決の大前提になるのではないかと考えています。

「きょうだいでそういう話はしづらい」「色々と難しいから自分ではできない」「もうとにかく疲れちゃった」。そういった方は,弁護士に依頼すれば,交渉等を弁護士に任せられますし,直接の連絡からも解放され,それだけでも心理的にだいぶ楽になると思います。

防災士になりました

弁護士登録から3年後に発生した東日本大震災。

東日本大震災以降,弁護士として行う福島第一・第二原発事故被害者の方々に対する支援活動をきっかけに,全国各地の災害復興支援や関東弁護士会連合会管内,そしてもちろん群馬県内の災害復興支援,平時の災害対策について弁護士の立場から取り組んできました。

しかし,私は,災害関連の法律を虫食い的に勉強してきただけで,災害一般に関する理解が欠けている。また,そもそも,「弁護士としての防災」の前提として「一般人としての防災」の視点が乏しい。その上で,災害関連法制の体系的理解も足りない。そういう悩みがありました。

そこで,まずは,災害一般に関する知識,一般的な防災の知識を学ぼうと思い,先日,防災士の研修を受けてきました。

防災士とは,「”自助”“共助”“協働”を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、 そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した人」 とのことで,試験内容も,災害や防災に関する全般的な知識が求められるものです。つまり,私の悩み(災害関連法制の体系的理解の点を除きます。)の解消にうってつけでした。

「待っていられない」のが私の性格。東京での研修は6月,7月まで満席だったので,一番早く研修を受けられる3月の大阪研修を希望しました。

締切直前の申込みだったので,研修まで2週間ほどしかありませんでした。その中で,研修開催日までに読み込まなきゃいけない資料が膨大で,しかも事前課題ペーパーもなかなか大量で,夜,寝る前にマーカーペンと鉛筆を握りしめて,回答用紙を埋めていきました。

しかし,防災士試験は,30問中21問,7割正答(当時。現在は8割になったようです。)で合格とのことなのですが,事前に送付された試験対策問題集が難しい!!

正直,こりゃ落ちるかもしれないと思い,私のスマホの検索履歴には「防災士 難易度」「防災士 落ちた」「防災士 合格率」といった文字が並びました。

落ちたら恥ずかしいので,防災士試験を受けることも,その日大阪にいることも誰にも告げず,こっそり出掛けました。

まる2日間にわたる大阪での研修は,「試験とは直接関係はありませんが」(←ここ大事),各分野で第一線として活動されている方々からの講義が目白押しで,本当に勉強になりました。試験対策のための内職などをする気も起きないくらい,素晴らしい講義ばかりでした。

試験はというと,あの試験対策問題集の難易度が嘘のような平易な問題で,逆にびっくり。2問迷いましたが(しかも最も悩んだのは法律関係の問題),合格はしているだろうなと思い,試験終了後,帰りの新幹線の中で,ようやく兵庫の津久井進日弁連災害復興支援委員長に,ついさっきまで大阪にいたこと,防災士試験を受けたことをご報告しました(が,津久井委員長はその日,ご自身の応援する某市長選挙の開票日で,それどころではなかったようでした笑)。

1週間ほどして,試験結果が届きました。合格とのことで,安心しました。

悩んだ設問が幸いにして正答だったようで,全問正解のおまけ付きでした。

防災士に登録するには,試験に受かっただけではダメで,消防署等が実施している普通救命講習を受講する必要があるとのことでした。制度の趣旨からすると,直近の受講が求められるのでしょうが,有効期限がないものであれば,いつのものでもよいとのことでしたので(この5月以降NGになったようですが),たまたま司法修習生の頃,検察庁で受講した救命講習の修了証が私の机の中に入っていたので,これを提出しました。

ということで,平成31年4月末,防災士に認証されました。

防災士認証状

今回得た知識をバックボーンにして,弁護士としての災害復興支援や平時の災害対策に生かしていきたいと思います。

そして,考えたくはありませんが,群馬で大規模災害が起こったときは,まさにこの防災士としての活動もしていきたいと思います。

継続は力(弁護士の被災者支援活動)。

私は東北大学の法科大学院を卒業している関係で,東日本大震災は本当にショックでした。

何かしたい,何かしなくては,と思うものの,災害に対して,弁護士というものはあまりにも無力だと絶望しました。

自衛隊の方々,消防の方々,行政の方々,ボランティアの方々に比べて,自分は何にもできない,このバッジは何なんだろう,と無力感にさいなまれました。

しかし,実際には,弁護士としてできること,弁護士しかできないことというのがたくさんありました。

それを教えてくれたのが,岩手弁護士会・仙台弁護士会・福島県弁護士会ほか被災地弁護士会の献身的な活動であり,それを後方で支援する日本弁護士連合会,阪神淡路大震災を経験した兵庫県弁護士会,中越・中越沖地震を経験した新潟県弁護士会ほか各地の弁護士会や,各地の弁護士有志でした。

弁護士でもできることがある。弁護士しかできないことがある。

そう思った私は,弁護士としての被災者支援活動に身を投じました。

ちょうど1か月後に全国で初めて言い渡される福島第一原発事故被害者損害賠償請求訴訟もその一環です。

日弁連でも,災害復興支援委員会の運営委員とさせていただき,4万件を超える法律相談事例集の作成や立法提言に携わらせていただきました。

↓日弁連のサイトから↓(短縮版)

↓フルバージョン↓

いろんな法律相談を通して,法の不備・運用の不備が明らかになります。

今の法律だと,あるいは今の運用だと残念ながら救われないかもしれない。

でも,法律が変われば救われる。運用が変われば救われる。

ニーズがあるんだ,と立法機関や行政に理解してもらうため,4万件以上の法律相談は何事にも代えがたいものでした。

 

まもなく東日本大震災から6年が経ちます。

被災者支援は一過性のものであってはなりません。やり続けなければなりません。

先日,第1回関東弁護士会連合会賞の授賞式がありました。

第1回という栄えある賞の受賞者は,静岡県弁護士会の葦名ゆき弁護士でした。

葦名先生は,まさに,ずっと継続して,関弁連内で,あるいは地元静岡県弁護士会内で,被災者支援活動をなさってきた方です。

その活動が評価されて,第1回関弁連賞を受賞されたのです。

そんな葦名先生が受賞に際して,ブログを更新なさいました。

「第1回関東弁護士会連合会賞」を頂きました。(弁護士YA日記)

私も,葦名先生と,関弁連の災害対策協議会PTという少数PTでご一緒させていただいており,激務を激務と思わず,愚痴もこぼさず黙々と活動なさってきた葦名先生を知る者として,感無量です。

まさに「継続は力なり」です。

とてつもない大きなものが相手であっても(それが「大震災」であっても),時間をかけてでも,じっくり,一生懸命,やれることを総動員して,やる。諦めない。

葦名先生のご活躍は,弁護士として忘れてはいけない大切なことを思い出させてくれました。

 

子どものための離婚

「子どものために,離婚します。」

そうおっしゃる方はなかなかいらっしゃいません。
「むしろ逆なのでは?」と思われるのではないでしょうか。

子ども,特に未成年の子どもを抱える方々が,離婚をするかどうかで最後まで考えるのは,
「子どものために,離婚を思いとどまった方がいいのではないか」ということだと思います。

子どものためには両親が揃っていた方がいいのではないか。

子どもが独り立ちするまで,自分が我慢して,耐えて耐えて頑張る方がいいのではないか。

お子様への愛情の深い方は,常にそのお気持ちを持ち続けていると思います。

また,ご自身の中でその葛藤を乗り越えてパートナーに離婚を切り出しても,
「子どものために,仮面夫婦でもいいから,もう少し我慢してくれないか。」
といわれてしまうことも多く,また悩みは振り出しに戻る・・・

そして,自分だけが我慢していく中で,どんどん時間が過ぎていく。

非常に多数の方が抱えている・・・というか,
子どもを抱える万人共通の悩みといっても過言ではない悩みなのではないでしょうか。

「子どものためには離婚をせずに,両親が揃っていた方がいい」。

一般論としては,聞こえのよい言葉です。

しかし,本当にその言葉は,全てのケースにおいて当てはまるのでしょうか。

確かに両親は揃っている。
しかし,両親は顔を合わせれば子どもの前でも喧嘩ばかり。
あるいは,子どもの前でも冷え切っている関係を隠すことができず,会話もない。
夫婦間の会話もないし,ただ,同居しているだけ。

この状況は,果たして子どもさんの精神状況にプラスでしょうか。

愛情いっぱいの母子家庭・父子家庭。
時々お父さん(お母さん)がやってきて,親子で楽しく過ごす。

そういう関係が構築できるとして,それよりも,
毎日喧嘩ばかりの両親を見て成長させる方が幸せでしょうか。

いろいろな家庭の現状があると思います。

「子どものため」というのは,何よりも優先されるべき事項です。

ただ,「本当に子どものためになるのは,どういうことか。」というのは
・パートナーとの関わり合い(割り切って,子どもの前では笑顔でいられるか,協力して子育てができるのか,etc.)
・子どもの年齢・精神状況(既に父親・母親との信頼関係ができあがっていて,精神的にもそれなりに自立しているか。)
・離婚後の面会交流が充実したものにできるか
といった様々な要素を考慮した上で,
「離婚をしない言い訳」としての「子どものため」を排除して,じっくり考える必要があるでしょう。

少なくとも,子どものことを考えて離婚は控えるという結論に達したとしても,それは,
「子どものために離婚しない方がいい」という原則論だけでゴリゴリ突き進むのではなく,
今後,子どもの前ではいい父親,いい母親として,また,仲のいい家庭を演出できる覚悟を双方が持てた。
そういう中での結論であることが望ましいのではないでしょうか。

遺産分割について

遺産分割については,本当に良く揉めることが多いですね。
揉めるいくつかのケースがありますので,ざっくりと書いてみます。

1 長兄単独相続希望のケース
良くあるパターンは,最近は少なくなっているとはいえ,長男が,自分が跡継ぎだからといって
遺産を全部持って行こうとして,その弟や妹たちが納得できないというもの。
「自分は親父から『自分が死んだら全部お前にやる。』と言われていたんだから,親父の意思を尊重する」
などと述べることもあります。

しかし,それは通らない話です。
親父さんとして,本当にそう思っていたのであれば,なんとしても生前,遺言を作成しておくべきでした。
有効な遺言がなく,口頭で「全部お前にやる」と言った言わないという話が出ても,無理です。

長男であろうと二男であろうと,長女であろうと末の弟妹であろうと,
原則として子ども達全員が均等に遺産を分けることになります。

家督相続制度が廃止された現行民法になって,はや数十年が経っている現在においても
長男優先主義,家督主義がはびこっていることに正直なところびっくりします。

しかし,おそらく,平等に遺産を相続するという法律があることは知っている。
でも,全相続人で合意すれば,自分が全て相続できることも可能である。
(それはたしかにそうです。合意があれば,の話ですが。)。
だから,弟妹たちに納得してもらおう。説得しよう。
そういう流れなんだと思います。

ただ,この考えは,弟妹たちが反対すれば破たんしますので,次善の策を講じなければなりません。

2 無報酬介護・寄与分主張のケース
また,これは本当にかわいそうな話なのですが,
老齢の親を引き取り,何十年も介護をして,自分たち家族は本当に疲弊した。
しかし,遠方に行ってろくに面倒も見ないどころか顔も出さないきょうだいが
「平等」の相続分を主張してきた,というケースもあります。
ネットでいろいろ調べて「寄与分」という概念を知ったので,これを主張したい,というケース。
親の介護をしたということは,原則として寄与分の増額には繋がりません。
平等ということになります。
「じゃあ親の面倒を見ただけ損ではないか」というお気持ちも,ある意味もっともです。
できれば,そういった状況も加味して遺産分割協議が整えばいいのですが・・・

面倒を見てくれた子どもに遺産を多く渡したいというのは,親として一般的な気持ちかもしれません。
そうであれば,やはり先ほど述べたように,なんとしても生前,遺言を作成しておくべきでした。

3 遺産の分割方法で揉めるケース
遺産のすべてが預貯金なら,機械的に分配できますので,
遺産分割で揉める危険はそのほかに比べれば低いのですが,
不動産やら何やらがたくさんある場合は,なかなか揉めることが多いです。
すべての不動産を相続人で均等に共有というのは一番平等なのですが
2世代,3世代後,まるでねずみ算のように相続人が増えてしまった場合,
売るに売れない土地になってしまいます。
誰がどの土地を相続するのか,誰がどの遺産を相続するのか,
それで揉めるパターンも数多くあります。

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遺産分割というのは,揉めた場合には1年以上かかることも決して珍しくありません。
ですから,まず,自分が生きているうちに遺言を書いておくことが何より大切です。

もし,遺言がなく揉めている場合は,おそらくきょうだい間で心情的・感情的対立が激しいのだと思います。
感情をどこまで裁判所に持ち込むかというのは悩ましいところもありますが,
感情なしの人間というのもあり得ないわけですから,
法律ではどうなるか,ということを知っておいた上で,判断すべきことだと思います。

なお,遺産分割で揉めた場合は,遺産分割調停が有用です。
裁判所の調停委員さんはいろいろな肩書の人がいらっしゃいますが,
遺産分割調停では,弁護士や税理士等の専門士業が
調停委員として参加していることも少なくありません。
それでも,調停委員は中立的立場にいなければなりません。
どちらか一方の味方になることはできませんので,
必要があれば,自分の味方としての代理人弁護士に依頼して
弁護士とともに調停に行くべきでしょう。

ただ,私も含め,多くの弁護士は,正直なところ,税金関係や登記関係に疎いです。
餅は餅屋で,税理士や司法書士が精通しているところです。
税理士や司法書士と提携している弁護士に依頼すると,スムーズかもしれません。

先ほども述べましたが,遺産分割調停は年単位で時間がかかることが珍しくありません。
調停は月に1度程度とはいえ,心理的にものすごいエネルギーを費やす方が多いので,
これが長く続いてしまうと,大変疲れてしまいます。
調停や事件との適度な距離感を持つことが大事だと思います。

どの時点で弁護士に依頼するか?

法律相談では,ご相談の内容について,法的分析と見通しをお伝えするとともに
ご依頼をいただくこともあります。

そこで,どの時点で弁護士に依頼するか,というのがよく話題に上がります。

結論は一律ではなく,具体的なケースによって千差万別だと思います。

たとえば,離婚。

当事者間で離婚の話し合いをして,一番揉める点,たとえば親権や慰謝料について
だいたいの合意ができているとかといった場合は,その交渉の時点で弁護士を入れると,
かえって事が荒立ってしまうこともあり,離婚ができなくなってしまうとか,
そういった危惧があるなら,当事者間での話し合いを継続してもいいと思います。
そして,弁護士は,たとえばその話し合いの中で,で知りたいことがある等という場合に
スポットで法律相談をする,といった使い方も考えられます。

一方,交渉してもどうにもならないことが明らかな場合,交渉の段階から弁護士に依頼するということもよくあります。
当事者間の力関係で,自分がどれだけ頑張っても対等な立場での交渉は難しいという場合などです。
DV(精神的虐待を含む)等を原因とする離婚の場合はそういった傾向が顕著です。

よく「調停は弁護士を入れた方がいいですか?」と聞かれます。

調停の待合室での感覚では,弁護士を付けず,当事者だけでやっている調停の方が多いように思います。
通常の離婚調停であれば,弁護士に依頼する費用も考えて,まずは自分でやってみて,
その中で,たとえば調停委員さんが向こうの言い分を重く扱い,こちらの言い分をあまり聞いてもらえないとか,
相手が弁護士を入れたからこちらも,というようなことで弁護士に依頼することが多いようです。

訴訟になったら,弁護士に依頼するのが一般的でしょう。

不貞などの慰謝料請求は?

ご自身で進めるのであれば,いろいろな思いのある中で,極めて冷静に事を進める必要があります。
しかし,どうしても気持ちが入ってしまい,必要以上に大事になってしまうこともあります。
内容証明郵便を1通送れば自動的に満額回収できるということは滅多にありません
(全くないわけではありませんが)ので
最初から,代理権のある弁護士に依頼するのが良いのではないかと私は思っています。

では,たとえば交通事故はどうでしょう。

これも,最初の段階から弁護士に依頼することもあります。
しかし,一般的には,相手方保険会社から示談の提案が来て,その金額に納得がいかないとか,
あるいはその金額が正しいのか知りたいという段階でのご依頼が圧倒的に多いです。
休業損害,後遺障害認定についてのご不満等もかなりありますね。

ただ,たとえばまだ治療中なのに相手方保険会社が治療を打ち切ってくれと強行に言い出したり,
あるいは,相手方保険会社の担当者からの電話連絡が怖くて対応を弁護士に任せたいという方もいらっしゃいます。
その場合は,相手方保険会社からの示談の提示の前にも受任することがよくあります。

では,債権回収は??

金融機関などは自分で差押えなどを行えますが,一般の方はそうではないことが通常です。
そして,確定判決や公正証書がない限り,いきなり差押えというのはできません。
保全手続もありますが,余計にお金がかかります。
ですから,差押えなどの前提として,裁判などを起こさなければなりません。

日本の民事訴訟の大原則は,弁護士に委任せず,本人でも裁判を起こせますし,
自分自身で訴訟活動を行うことができます。
とはいっても,やはり餅は餅屋ではないですが,弁護士に依頼した方が円滑でしょう。
もっとも,債権の存在や金額について争いがない場合には,訴訟以外の手続を,本人が行うことも十分可能です。

・・・というように,いろいろと状況に応じて変わるのですが,一番最悪なのは
本来弁護士に依頼すべきだったのに,それをしなかったばかりに思わぬ結論になり,
それが決まってしまった後に弁護士に相談する,という事態です。

弁護士は高いという印象がかなり世の中にあり,それは残念ながら間違いない場合が多いと思います。
(私の場合も,多くの弁護士と同様離婚は着手金で30万円+消費税,別途成功報酬はいただきますし。)
ただ,法律相談は無料にしている弁護士も多いようですし(私は無料相談はしていませんが),
有料の場合でも,多くの法律事務所では5000円~10000円+消費税程度で相談を受けることができます。

ですから,自分自身で,まだ自分だけでできるとか,そういった判断をせず,
できるだけ早い段階で,まずは弁護士に一度相談してみてアドバイスを受け,
そのとき,どの時点で弁護士に依頼すべきかということもあわせて相談してみることがいいと思います。

交通事故の賠償請求の進め方

交通事故については,弁護士費用特約(いわゆる「弁特」)が一般化されたので
今までは「弁護士に相談してみようか」「弁護士に依頼しようか」と考えても
費用の関係で躊躇していた方々が,弁護士に依頼するようになったようです。

一般的な交通事故の損害賠償は,お互いの保険会社同士の交渉でまとまることが圧倒的に多く,
それはそれで非常に有益だとは思います。
保険会社は圧倒的な人員がいますし,大量に案件を手がけているため定型的な処理が可能ですし
だからこその「落としどころ」がだいたい見えている中での保険会社同士の交渉になるからです。

ただ,交通事故の損害賠償で保険会社の提示する金額というのは,
裁判で認められるであろう金額より低いのが一般的です。

ざっくりいうと,基準の低い順に

1 自賠責基準
2 保険会社基準
3 裁判基準

と3段階あり,できれば一番高額な裁判基準を被害者側は当然希望するわけですが,
これは裁判になるか,あるいは少なくとも弁護士が介入することを条件にしている保険会社が圧倒的多数です。

(私も以前,代理人弁護士として裁判基準で請求したら「裁判になってもいないのにそんな金額は払えません。」ととても失礼なことを某保険会社担当者から言われたことがありますが,それは本音でしょう。この保険会社担当者には,最高裁判所を頂点とする裁判所以外の法的秩序があるのかもしれません。)

ですから,後遺障害の有無にかかわらず,弁護士に依頼した場合,認められる損害賠償額が大きくなるのが一般的です。

ただ,あえて「全ての事案で」とは言わず繰り返し「一般的」という言葉を使っているのには理由があります。
保険会社側も,双方の主張の違いを飲み込んで,たとえば損害の算定根拠だったりを多めに出すこともあります。
それは,争うことで生じる負担を未然に防ごうという考慮だったりします。

そのあたりも踏まえて,交通事故の損害賠償額が増える見込みがあるのか,じっくり検討する必要がありますので
弁護士に相談・依頼する際には,相手方の主張や保険会社とのこれまでの交渉の経緯等についても
お話をしていただくことになります。

また,相当程度いらっしゃるのが,交通事故で被害を受けて精神的に参ってしまっていて,
そんな中,相手方の保険会社からの電話に負担を感じているので,なんとかならないかという方です。
保険会社の担当者も,立場もありますので,早くまとめたいと思って強引になったりすることもあるでしょう。
例外的なケースでしょうが,担当者の高圧的な「暴言」を録音された被害者の方もいらっしゃり,私もその暴言を聞いて驚愕したこともあります。
そういう場合は,弁護士が受任すれば交渉の窓口が弁護士に一本化されますので,
相手方保険会社の担当者からご自身に連絡が来ることはなくなります。

最後に,裁判について少し。

群馬に着任する裁判官は,交通事故に関する民事訴訟の割合の多さにびっくりされるそうです。
群馬は日本有数の車社会ですので,仕方のないことでしょう。

「裁判」と聞くと,自分とは全く違う世界のことで,とても精神的な負担を感じる方が圧倒的多数だと思います。

そもそも弁護士に相談すること自体,不安と緊張を抱えながらやっとの思いで行っているのに,
その弁護士から「裁判すれば」云々という言葉が出てきたら,さらに負担に思うかもしれません。

ただ,私が必ず説明することで,皆さん驚かれるのですが,「裁判」は,想像するほど精神的な負担はありません。
むしろ「調停」よりだいぶ精神的に楽だと思います。
調停は月に1度のペースで行われ,1回につき2時間,原則としてご本人も裁判所にお越し頂きます。
ただ,裁判は,基本的には弁護士だけが裁判所に行けばいいのです。
事前に,裁判所で行われる手続のために,弁護士の事務所で入念に打合せをすれば,一部例外を除き,当日は行かなくてもOKです。

本人が行かなければならないのは,その裁判の終盤戦にあるかもしれない「尋問」のときの1回です。

また,私はできればいらして頂きたいと思っているのが,和解期日です。
ご自身の紛争ですから,まとまる前にじっくり考えて頂き,
疑念のない状況で和解を成立させるのが望ましいと考えているからです。

尋問は必ず行われるわけではなく,その前に和解で終了することもかなりありますし,
和解も事前に十分弁護士と検討して,納得しているので特に裁判所に行く必要はないと考えて
結局裁判所には一度も行かないまま裁判が和解で終了した,というケースも多数です。

ということで,まず交渉からスタートして,場合によっては裁判,
あるいはその他の方法で解決を図るというのが,交通事故の損害賠償の一般的なルートであり,
当事者の精神的負担をなるべく軽くしつつ,解決に向けて進めていくというのが弁護士の仕事です。

遺言は公正証書で

【遺言書作成のススメ】
亡くなる前に遺言書を,という考えが最近一般的になってきました。
これは非常に良いことだと思います。

遺言は,亡くなる前に,自分の財産について誰に何を渡すのかを考えるものですから,
自分が亡くなった後,自分の遺産をめぐる子どもたちの紛争を予防することができます。

自分の子どもたちが遺産分割調停というけんかをさせたいという親はなかなかいないでしょう。

また,生前に遺言を作っておくこと(作る作業をすること)で,自分自身にとってもいいきっかけになります。

まず,自分の財産には,何が,どこに,いくらあるのかをしっかり把握できるということ。
だいたいの財産はわかるけれども,正確に全て挙げられるかはちょっと不安だ,という方も多いのではないでしょうか。
遺産目録という名の財産リストをじっくりと作ることで,自分の財産を正確に把握することができます。
亡くなった後,相続人が動くよりも正確かつ迅速なので,遺産分割手続が早く終わることも多くなるでしょう。

続いて,何を,誰に相続させるか考えることで,配偶者だったり子どもたちだったり,
一人一人の顔を思い浮かべながら,一番ベストな分割を考えることができることです。

その中で,もしかしたら新婚当初の幸せな時間,初めての子どもが生まれて不安もあったけれど嬉しかった時期,
下の子が生まれてさらに忙しくなったとき,子どもたちが学校に通い始めた時期,
子どもたちが一人暮らしを始めたり,独立したり,結婚したりした時期。
子どもたちに,さらに子どもが生まれた時期・・・さまざまな思い出がよみがえってくることもあるでしょう。

不動産についていえば,念願のマイホームだったり,親から相続した土地であったり,
バブルがはじけてしまって損してしまった土地だったり,いろいろな思いが出てくるかもしれません。

そういった財産は,自分の生きてきた証(文字どおりの「財産」)でもあります。
ですから,それを誰に,どのように分けるかというのは,自らの意思でしっかり決めておくに越したことはありません。

遺言はいつ作ってもかまいません。
結婚したとき,子どもが生まれたとき,といった早い時期から作っておいても損はありません。

【公正証書遺言のススメ】
そして,できれば遺言は公正証書にしておくべきです。
たしかに自筆遺言は費用はかかりませんし,手間暇もかかりません。
しかし,遺言は厳格な要件があり,少しでもそれを満たさないと無効になってしまう恐れがあります。
無効になってしまったら,紛争が予防できるどころか,さらに激化させてしまう可能性もあるわけです。

ですから,財産に応じて費用はかかりますが,無効になる可能性が少ない公正証書遺言を強くおすすめします。

私の知人にも,公正証書を作成しようと公証人役場に行ったけれども,あれを出してほしいこれを出してほしいと言われ
「こりゃ大変だ」と思って尻込みしてしまった人もいらっしゃいます。

しかし,そういった場合は,弁護士に依頼すれば,弁護士が戸籍の取り寄せも行いますし,
財産についても,「こういうのはありますか?」など,アドバイスをすることもできます。
電話や面談などで入念に打ち合わせしながら遺言書の案を作成し,
さらに,公証人と交渉し,遺言書の内容を詰めて,
その人にとって最善の遺言書を作ることができるのではないでしょうか。

さらに,遺言書には,自分が亡くなった後,自分の分身として,遺言書どおりに財産を分配する
「遺言執行者」を遺言書の中であらかじめ指定しておくことが望ましいでしょう。
これも,親族だったり弁護士だったり,あるいは信託銀行だったり,いろいろな手段があります。

【遺留分について】
ところで,遺留分という制度があります。
配偶者だったり子だったりといった相続人の一部の者は,最低限相続できる範囲があるというもので,
推定相続分の2分の1だったり3分の1だったりが遺留分となります。
(たとえば子どもがいる場合の配偶者だったら通常2分の1ですので,その半分である4分の1が遺留分となります)
「自分に相続分がない」「自分の相続分が足りない」と相続権者の一人が知ったら,期間内に
その「遺留分」を求めることができます。
遺言書を作成するときには,遺留分も見越した上で作成するか,
特に遺留分については考えず,請求された場合に相続人たちに対応してもらうことにするか,
いろいろな考え方があると思いますので,その点も事案に応じて検討されるべきだと思います。

何はともあれ,遺言書の作成は,将来の紛争を未然に防ぐという,残された家族に対する親の優しさでもあります。
自分の意思を最後の最後に表明できるものでもありますので,是非とも作成を検討されてみてはいかがでしょうか。

不貞行為の慰謝料と時効

今回は,いわゆる「不倫」(不貞行為)と慰謝料について,ちょっと誤解がありそうなところをスポットで書きます。
よく「慰謝料請求は3年で時効」っていうけど,それは本当なの?ということです。

言うまでもありませんが,不貞行為は,法律上「不法行為」です。
不法行為ですので,損害賠償請求(いわゆる慰謝料請求)の対象となります。

そして,不法行為による損害賠償の請求権は,「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」とされています(民法724条)。

ですから,被害者が「配偶者が○○って奴と不倫している!」ということを知ってから3年の間に慰謝料請求をしないと,慰謝料請求権は消滅時効にかかってしまうように思えます。

「3年以上前,夫が××に住んでた○○と不倫していることを知ったけど,そのときは慰謝料請求せず,再構築を目指した。でも,やっぱり許せない。離婚とともに慰謝料請求したい。でも,時効なの?」
あるいは逆に「3年以上前,妻に○○との不倫がばれたけど,その後何も言ってこなかったらもう大丈夫。時効だ。」

・・・なんて思っていませんか?

ですが,民法159条という条文があります。
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」というものです。

ですから,婚姻を続けている限り,この配偶者に対する不貞の慰謝料は原則として消滅時効にかかりません。
離婚調停をしているなら,あるいは離婚の協議をしているなら,しっかりと請求することができます。

もっとも,不貞相手に対する損害賠償請求権は原則どおり3年で消滅時効にかかりますので
夫(妻)には請求できるけど,不貞相手には請求できない,という自体が考えられます。

また,3年という起算点も問題となります。
「不法行為」をどうとらえるかという点とも直結するのですが,慰謝料請求の原因となる不法行為について,「不貞行為のみならずこれにより婚姻関係が破綻し離婚に至ったことをも含むものである」として,不貞行為から3年は優に過ぎているけれども,離婚からは3年経っていないという事案で,消滅時効の起算点を「遅くとも離婚の届出がなされた」日として,不貞相手に対する慰謝料請求を認めた裁判例もあります(東京地判平成17年1月31日判例秘書判例番号L06030384)。

ですから,「3年経ったからアウト(セーフ)」といったような判断は,必ずしも正確ではありません。

では,ちょっと横道にそれますが,「損害及び加害者を知った時」とはいつでしょうか?
「LINEのID(あるいはメールアドレス)はわかるけど,住所も本名もわからない」という状態から3年間のカウントダウンが進むのでしょうか。
最高裁判例は(だいぶ古いですが)現実の氏名及び住所を知ったとき,としています。

ですから,逆に,離婚した元配偶者に対する不貞の慰謝料請求は消滅時効にかかってしまったが,
不貞相手の住所氏名の情報は最近知ったので,まだ請求できる,という自体も考えられます。

なお,「20年」という期間(これを「除斥期間」といいます。)は,伸ばせません。
ですから,21年前の不倫の慰謝料,というのは請求できません。

また,だいぶ前の不貞の慰謝料請求権というのは,法律上請求できるかというのはともかくとして,慰謝料が低く認定されるきらいがあるような気がします。
先ほど紹介した東京地裁の判決も,「被告に対する慰謝料の支払を求める本件調停の申立ては,離婚後2年半も経過してからなされていること」という時的要素を,慰謝料を減額する方向に導く事実として指摘しています。

ただ,離婚事件の多くは,任意の交渉や調停において,慰謝料だけではなく,財産分与などもあわせて一括で話し合われることが多いので,少なくともその中で,慰謝料請求権が消えてしまったと安易に考えるのではなく,重要な要素として検討されるべき事項だと思います。

・・・といろいろ雑駁に書き連ねてしまいましたが,私が言いたいことは

・「慰謝料の時効は3年」と一般に言われていて,その言葉が一人歩きしすぎている感じがするということ
・「いつから3年」なのか,事案の概要に応じてじっくり検討しなければならないこと
・そもそも婚姻期間中は消滅時効は完成しないので,3年を過ぎても請求可能であること
・できれば財産分与など全体的な視野で解決した方がいい場合があること

ということです。

不貞の慰謝料請求は,多くの弁護士がよく扱う案件ですし,その案件の多くは,そう昔ではない不貞を問題としているものです。
しかし,熟年離婚だったりした場合には,問題になることはあります(弁護士でも民法159条を知らない方もいて,私が準備書面で主張したこともあります。)。
そういった場合には,しっかりとした検討が必須です。

離婚にともなう法律問題

今日は【離婚】についての基本的な法律問題を,広くざっと説明します。

離婚の法律相談は,私だけではなく,大多数の弁護士も多数受けていると思いますが,
そこで必ず問題になることについて少し書いてみます。
私もご多分に漏れず,離婚関係(認知や面会交流なども)は一番取扱いが多い分野の一つです。

【離婚は簡単にできる?】
日本は外国に比べ,離婚しやすい国といわれています。
考えてみたら,双方の合意があればですが,緑色の紙1枚を市役所等に提出すれば
それで離婚が成立するわけですから。
一方,たとえばフランスなどは,何らかの形で裁判所が関わります。

では,それはいいことか?というと,そうでもないことも多いです。
離婚を急ぐ一心で,取り決めておくべきことが決められていない,
あるいは不十分な内容だということはよくありますし,
そのために離婚後(主に子を持つ母親が)困ってしまう,ということも見受けられます。

ですから,離婚の条件を検討するとき,できれば弁護士に内容をチェックしてもらうべきだと思います。
どんなことを検討しなければならないか?ということを,つらつらと書いてみます。

【離婚のときにあわせて何を決めるか?】

<親権>
まず,未成年のお子様がいらっしゃるときは,父母のどちらが親権を持つか必ず決めなければなりません。
ここでもめることが多いです。
もめることが多いのですが,「意地」ではなく「子供のためにどちらがいいか」という観点から検討すべき問題です。
親権は「権」という文字が入っていますが,「権利」というより「義務」だと思った方が良いと思います。
世間体や体面,メンツや意地ではなく,子供の立場から考えなければなりません。

<養育費>
未成年のお子様がいらっしゃる場合,今後子供を自分のところで育てる親は,
もう一方の親から月々の養育費を受け取ることができます。
この金額は,裁判所のウェブサイトにも載っているように,だいたいのところは決まっていますし
iPhoneで養育費を算定できるアプリもあります。
が,この算定表は万能ではありません。
双方が子供をそれぞれ引き取るといった場合には,算定表ではなく基準式に基づく計算が必要になります。
また,いつまで発生するのか,ということも問題になります。18歳なのか,20歳なのか,22歳なのか。
「養育費はいらない。早く離婚したい。」という声はよく聞きますが,
お子様のためです。じっくり検討すべき問題だと思います。

<面会交流>
夫婦は離婚したら他人ですが,親子の関係は親同士が離婚しても変わりません。
原則として,実際に手元で育てている親は,他方の親に対し,子供に会わせる(これを「面会交流」といいます。一昔前は「面接交渉」と言っていましたが,いずれにしても略語は「面交」です)義務があります。
しかし,よく誤解されるのですが,面会交流は「親の権利」というだけではありません。
むしろ,「子どもの権利」という側面が強いものです。
実際に毎日子供に会っていない親の気持ちにしてみたら,面会交流は格別です(一般論ですが)。
それは,子供としても同じです(一般論ですが)。
ですから,「養育費もいらない!だから子供にも会わせない!」というのは,
気持ちとしてはよくわかりますが,それが通じない場合も多いということを知っておいていただければと思います。
なお,面会交流と養育費はセットではありませんし,対価でもありません。
「養育費はいらないから面会交流させない」というのは理論としては難しいところです。

<年金分割>
離婚時の年金分割という制度があります。
(多くは)夫名義で入っていた厚生年金や共済年金(将来もらえる年金)を夫婦で分割する制度です。
だいぶ周知されてきて,よく調べてきている相談者の方は,年金分割もしたいとおっしゃる方が多くなっています。
年金分割は離婚後も2年間は請求できますが,機械的に定まるものなので,できれば離婚と同時にやってしまうべきです。
さんざん揉めて離婚して,あぁ年金分割もあったっけ,となっても,年金分割手続をする余力が残っていないし
後でやればいいやと思っていたらあっという間に2年経ってしまった,ということも考えられます。

<慰謝料>
親権ともに揉める最大の要因のひとつが「慰謝料」です。
「慰謝料」という言葉が一人歩きしていて,離婚の時は必ずもらえるという誤解も一部であるようです。
が,不貞や暴力(DV)など,「不法行為」である場合にのみ認められるものなので,
何でもかんでも「慰謝料1000万円!」というのは得策ではないでしょう。

<財産分与>
これも誤解があるのですが,何でもかんでも夫(多くの場合)の財産の半分を受け取る権利がある,
と言うわけではありません。
結婚したときの財産から離婚(あるいは別居)するときまでに増えた財産・減った財産の「差額」について,夫婦で分ける,というのが財産分与です。
しかも,その増えた分が「固有財産」,たとえば親の遺産が入ってきた場合などは,それは財産分与の対象にはなりません。
ですから,もともと3000万円の貯金を持って結婚して,それが給与などで4000万円に増えたところで財産分与,という場合,
全額の4000万円を分割するのではなく,増えた分の差額1000万円を分割することになります。
また,「減った場合」の処理は深刻です。
せっかく家を建てたが,土地建物の評価額より住宅ローンの残高の方が多い,というのは本当によくあることです。
そういう場合の処理は,常に悩ましいものがあります。

【まとめ】
以上のように,「離婚」といっても,これだけのことを(できれば事前に)まとめておく必要がありますので,
できれば事前に弁護士に相談した方がいいと思いますし,お金のやりとりがあるのならば公正証書にするか,
あるいは調停を申し立てることを検討すべきと思われます。