防災士になりました

弁護士登録から3年後に発生した東日本大震災。

東日本大震災以降,弁護士として行う福島第一・第二原発事故被害者の方々に対する支援活動をきっかけに,全国各地の災害復興支援や関東弁護士会連合会管内,そしてもちろん群馬県内の災害復興支援,平時の災害対策について弁護士の立場から取り組んできました。

しかし,私は,災害関連の法律を虫食い的に勉強してきただけで,災害一般に関する理解が欠けている。また,そもそも,「弁護士としての防災」の前提として「一般人としての防災」の視点が乏しい。その上で,災害関連法制の体系的理解も足りない。そういう悩みがありました。

そこで,まずは,災害一般に関する知識,一般的な防災の知識を学ぼうと思い,先日,防災士の研修を受けてきました。

防災士とは,「”自助”“共助”“協働”を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、 そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した人」 とのことで,試験内容も,災害や防災に関する全般的な知識が求められるものです。つまり,私の悩み(災害関連法制の体系的理解の点を除きます。)の解消にうってつけでした。

「待っていられない」のが私の性格。東京での研修は6月,7月まで満席だったので,一番早く研修を受けられる3月の大阪研修を希望しました。

締切直前の申込みだったので,研修まで2週間ほどしかありませんでした。その中で,研修開催日までに読み込まなきゃいけない資料が膨大で,しかも事前課題ペーパーもなかなか大量で,夜,寝る前にマーカーペンと鉛筆を握りしめて,回答用紙を埋めていきました。

しかし,防災士試験は,30問中21問,7割正答(当時。現在は8割になったようです。)で合格とのことなのですが,事前に送付された試験対策問題集が難しい!!

正直,こりゃ落ちるかもしれないと思い,私のスマホの検索履歴には「防災士 難易度」「防災士 落ちた」「防災士 合格率」といった文字が並びました。

落ちたら恥ずかしいので,防災士試験を受けることも,その日大阪にいることも誰にも告げず,こっそり出掛けました。

まる2日間にわたる大阪での研修は,「試験とは直接関係はありませんが」(←ここ大事),各分野で第一線として活動されている方々からの講義が目白押しで,本当に勉強になりました。試験対策のための内職などをする気も起きないくらい,素晴らしい講義ばかりでした。

試験はというと,あの試験対策問題集の難易度が嘘のような平易な問題で,逆にびっくり。2問迷いましたが(しかも最も悩んだのは法律関係の問題),合格はしているだろうなと思い,試験終了後,帰りの新幹線の中で,ようやく兵庫の津久井進日弁連災害復興支援委員長に,ついさっきまで大阪にいたこと,防災士試験を受けたことをご報告しました(が,津久井委員長はその日,ご自身の応援する某市長選挙の開票日で,それどころではなかったようでした笑)。

1週間ほどして,試験結果が届きました。合格とのことで,安心しました。

悩んだ設問が幸いにして正答だったようで,全問正解のおまけ付きでした。

防災士に登録するには,試験に受かっただけではダメで,消防署等が実施している普通救命講習を受講する必要があるとのことでした。制度の趣旨からすると,直近の受講が求められるのでしょうが,有効期限がないものであれば,いつのものでもよいとのことでしたので(この5月以降NGになったようですが),たまたま司法修習生の頃,検察庁で受講した救命講習の修了証が私の机の中に入っていたので,これを提出しました。

ということで,平成31年4月末,防災士に認証されました。

防災士認証状

今回得た知識をバックボーンにして,弁護士としての災害復興支援や平時の災害対策に生かしていきたいと思います。

そして,考えたくはありませんが,群馬で大規模災害が起こったときは,まさにこの防災士としての活動もしていきたいと思います。

継続は力(弁護士の被災者支援活動)。

私は東北大学の法科大学院を卒業している関係で,東日本大震災は本当にショックでした。

何かしたい,何かしなくては,と思うものの,災害に対して,弁護士というものはあまりにも無力だと絶望しました。

自衛隊の方々,消防の方々,行政の方々,ボランティアの方々に比べて,自分は何にもできない,このバッジは何なんだろう,と無力感にさいなまれました。

しかし,実際には,弁護士としてできること,弁護士しかできないことというのがたくさんありました。

それを教えてくれたのが,岩手弁護士会・仙台弁護士会・福島県弁護士会ほか被災地弁護士会の献身的な活動であり,それを後方で支援する日本弁護士連合会,阪神淡路大震災を経験した兵庫県弁護士会,中越・中越沖地震を経験した新潟県弁護士会ほか各地の弁護士会や,各地の弁護士有志でした。

弁護士でもできることがある。弁護士しかできないことがある。

そう思った私は,弁護士としての被災者支援活動に身を投じました。

ちょうど1か月後に全国で初めて言い渡される福島第一原発事故被害者損害賠償請求訴訟もその一環です。

日弁連でも,災害復興支援委員会の運営委員とさせていただき,4万件を超える法律相談事例集の作成や立法提言に携わらせていただきました。

↓日弁連のサイトから↓(短縮版)

↓フルバージョン↓

いろんな法律相談を通して,法の不備・運用の不備が明らかになります。

今の法律だと,あるいは今の運用だと残念ながら救われないかもしれない。

でも,法律が変われば救われる。運用が変われば救われる。

ニーズがあるんだ,と立法機関や行政に理解してもらうため,4万件以上の法律相談は何事にも代えがたいものでした。

 

まもなく東日本大震災から6年が経ちます。

被災者支援は一過性のものであってはなりません。やり続けなければなりません。

先日,第1回関東弁護士会連合会賞の授賞式がありました。

第1回という栄えある賞の受賞者は,静岡県弁護士会の葦名ゆき弁護士でした。

葦名先生は,まさに,ずっと継続して,関弁連内で,あるいは地元静岡県弁護士会内で,被災者支援活動をなさってきた方です。

その活動が評価されて,第1回関弁連賞を受賞されたのです。

そんな葦名先生が受賞に際して,ブログを更新なさいました。

「第1回関東弁護士会連合会賞」を頂きました。(弁護士YA日記)

私も,葦名先生と,関弁連の災害対策協議会PTという少数PTでご一緒させていただいており,激務を激務と思わず,愚痴もこぼさず黙々と活動なさってきた葦名先生を知る者として,感無量です。

まさに「継続は力なり」です。

とてつもない大きなものが相手であっても(それが「大震災」であっても),時間をかけてでも,じっくり,一生懸命,やれることを総動員して,やる。諦めない。

葦名先生のご活躍は,弁護士として忘れてはいけない大切なことを思い出させてくれました。

 

平成27年9月関東・東北豪雨災害の被災者支援のために

平成27年9月9日から11日にかけて,関東地方から東北地方の広い範囲で豪雨により,
堤防の決壊,越水等が起こり,近年まれに見る水害が発生してしまいました。
お亡くなりになってしまった方々に対しましては心よりお悔やみ申し上げますとともに,
被災された方々には,心よりお見舞い申し上げます。

弁護士は自然災害に対しては無力です。
弁護士バッジがあったからといって,現実に発生しようとしている(あるいは発生している)地震や津波,水害などを止めることはできないからです。
しかし,被災者の方々・被害者の方々は,災害により,いつもどおりの生活ができなくなってしまっています。
その方々の「生活する権利」が侵害されている状況であることは間違いなく,そうであれば,弁護士の役割も決して軽くありません。

たとえば,法律相談を一つ取ってみても,災害時の法律相談には,精神的支援機能,
パニック防止機能,紛争予防機能,情報整理提供機能,立法事実集約機能といった,
いろいろな機能があるとされています。

要するに,困っている人たちのお話を伺って,法的アドバイスを行うことが,まずは相談者の精神的支援になりますし,
パニックの防止や紛争予防にもなります。
さらに,被災者の方々には,情報が全く届かなかったり,逆に,とんでもなく膨大な情報が届いてしまい,
被災者の方々も大変困ってしまうことが多い中,大変な災害で麻痺してしまっている行政に代わり,
その相談者に必要な情報を整理して提供するということができます。
さらに,災害法制は発展途上ですので,既存の法律では対処が難しい問題が新たに浮かび上がることも多々あります。
そういうときは,多数の法律相談で皆さんが同じように悩んでいることを集約して,自治体や国に届けて
条令や法律等を改正してもらうために働きかけるということもできます。

弁護士・弁護士会の役割は決して軽くないのです。

しかし,こういった弁護士の災害復興支援活動は,古くても雲仙普賢岳,阪神淡路大震災以降に始まったもので
日弁連(日本弁護士連合会)も,ようやく災害復興支援が人権擁護活動であるという理解をしてくれたという段階です。

弁護士の活動のノウハウは,阪神淡路大震災を経験した兵庫県弁護士会,中越・中越沖地震を経験した新潟県弁護士会,
そして東日本大震災を経験した岩手弁護士会,仙台弁護士会,福島県弁護士会などがその都度身につけてきたもので,
これらの弁護士会は,自分たちの得た経験を惜しみなく他の弁護士会に伝えてくれています。

私は,群馬弁護士会に所属していますが,日弁連の災害復興支援委員と
関弁連(関東弁護士会連合会)の災害対策PT委員を兼ねています。
この委員会では,先人達の経験やノウハウが毎日のように結集しており,最先端の知識が集まっている場所です。

日弁連災害復興支援委員会が持っている情報を生かして,群馬弁護士会も,
たとえば昨年2月の豪雪被害や本年の前橋・伊勢崎突風被害で被災者支援活動を行ってまいりました。

そして,私も,関東弁護士会連合会の災害対策PTの委員として,先日,茨城県弁護士会に伺い,
日弁連が持っている情報(弁護士会としてどう動くべきか等)をお伝えしてきました。
茨城県は東日本大震災の被災地でもあり,その活動は素晴らしいものでした。
今回もいち早く災害対策本部を設置し,会員一丸となって取り組んでいらっしゃいます。
私が話した内容も,実際は既に被災地の先生方は重々承知のことばかりだったと思いますが
少しでもお役に立つ部分があれば幸甚です。

災害は一瞬で「当たり前の暮らし」を奪っていくものですが,その後の復興は一瞬でできるものではありません。
インフラの復旧は,「生活」「地域」の復旧・復興とは別だからです。

弁護士にしかできない被災者支援も多数あります。
息の長い活動になると思いますが,私としても,できるだけのお手伝いができればと考えています。