継続は力(弁護士の被災者支援活動)。

私は東北大学の法科大学院を卒業している関係で,東日本大震災は本当にショックでした。

何かしたい,何かしなくては,と思うものの,災害に対して,弁護士というものはあまりにも無力だと絶望しました。

自衛隊の方々,消防の方々,行政の方々,ボランティアの方々に比べて,自分は何にもできない,このバッジは何なんだろう,と無力感にさいなまれました。

しかし,実際には,弁護士としてできること,弁護士しかできないことというのがたくさんありました。

それを教えてくれたのが,岩手弁護士会・仙台弁護士会・福島県弁護士会ほか被災地弁護士会の献身的な活動であり,それを後方で支援する日本弁護士連合会,阪神淡路大震災を経験した兵庫県弁護士会,中越・中越沖地震を経験した新潟県弁護士会ほか各地の弁護士会や,各地の弁護士有志でした。

弁護士でもできることがある。弁護士しかできないことがある。

そう思った私は,弁護士としての被災者支援活動に身を投じました。

ちょうど1か月後に全国で初めて言い渡される福島第一原発事故被害者損害賠償請求訴訟もその一環です。

日弁連でも,災害復興支援委員会の運営委員とさせていただき,4万件を超える法律相談事例集の作成や立法提言に携わらせていただきました。

↓日弁連のサイトから↓(短縮版)

↓フルバージョン↓

いろんな法律相談を通して,法の不備・運用の不備が明らかになります。

今の法律だと,あるいは今の運用だと残念ながら救われないかもしれない。

でも,法律が変われば救われる。運用が変われば救われる。

ニーズがあるんだ,と立法機関や行政に理解してもらうため,4万件以上の法律相談は何事にも代えがたいものでした。

 

まもなく東日本大震災から6年が経ちます。

被災者支援は一過性のものであってはなりません。やり続けなければなりません。

先日,第1回関東弁護士会連合会賞の授賞式がありました。

第1回という栄えある賞の受賞者は,静岡県弁護士会の葦名ゆき弁護士でした。

葦名先生は,まさに,ずっと継続して,関弁連内で,あるいは地元静岡県弁護士会内で,被災者支援活動をなさってきた方です。

その活動が評価されて,第1回関弁連賞を受賞されたのです。

そんな葦名先生が受賞に際して,ブログを更新なさいました。

「第1回関東弁護士会連合会賞」を頂きました。(弁護士YA日記)

私も,葦名先生と,関弁連の災害対策協議会PTという少数PTでご一緒させていただいており,激務を激務と思わず,愚痴もこぼさず黙々と活動なさってきた葦名先生を知る者として,感無量です。

まさに「継続は力なり」です。

とてつもない大きなものが相手であっても(それが「大震災」であっても),時間をかけてでも,じっくり,一生懸命,やれることを総動員して,やる。諦めない。

葦名先生のご活躍は,弁護士として忘れてはいけない大切なことを思い出させてくれました。

 

平成27年9月関東・東北豪雨災害の被災者支援のために

平成27年9月9日から11日にかけて,関東地方から東北地方の広い範囲で豪雨により,
堤防の決壊,越水等が起こり,近年まれに見る水害が発生してしまいました。
お亡くなりになってしまった方々に対しましては心よりお悔やみ申し上げますとともに,
被災された方々には,心よりお見舞い申し上げます。

弁護士は自然災害に対しては無力です。
弁護士バッジがあったからといって,現実に発生しようとしている(あるいは発生している)地震や津波,水害などを止めることはできないからです。
しかし,被災者の方々・被害者の方々は,災害により,いつもどおりの生活ができなくなってしまっています。
その方々の「生活する権利」が侵害されている状況であることは間違いなく,そうであれば,弁護士の役割も決して軽くありません。

たとえば,法律相談を一つ取ってみても,災害時の法律相談には,精神的支援機能,
パニック防止機能,紛争予防機能,情報整理提供機能,立法事実集約機能といった,
いろいろな機能があるとされています。

要するに,困っている人たちのお話を伺って,法的アドバイスを行うことが,まずは相談者の精神的支援になりますし,
パニックの防止や紛争予防にもなります。
さらに,被災者の方々には,情報が全く届かなかったり,逆に,とんでもなく膨大な情報が届いてしまい,
被災者の方々も大変困ってしまうことが多い中,大変な災害で麻痺してしまっている行政に代わり,
その相談者に必要な情報を整理して提供するということができます。
さらに,災害法制は発展途上ですので,既存の法律では対処が難しい問題が新たに浮かび上がることも多々あります。
そういうときは,多数の法律相談で皆さんが同じように悩んでいることを集約して,自治体や国に届けて
条令や法律等を改正してもらうために働きかけるということもできます。

弁護士・弁護士会の役割は決して軽くないのです。

しかし,こういった弁護士の災害復興支援活動は,古くても雲仙普賢岳,阪神淡路大震災以降に始まったもので
日弁連(日本弁護士連合会)も,ようやく災害復興支援が人権擁護活動であるという理解をしてくれたという段階です。

弁護士の活動のノウハウは,阪神淡路大震災を経験した兵庫県弁護士会,中越・中越沖地震を経験した新潟県弁護士会,
そして東日本大震災を経験した岩手弁護士会,仙台弁護士会,福島県弁護士会などがその都度身につけてきたもので,
これらの弁護士会は,自分たちの得た経験を惜しみなく他の弁護士会に伝えてくれています。

私は,群馬弁護士会に所属していますが,日弁連の災害復興支援委員と
関弁連(関東弁護士会連合会)の災害対策PT委員を兼ねています。
この委員会では,先人達の経験やノウハウが毎日のように結集しており,最先端の知識が集まっている場所です。

日弁連災害復興支援委員会が持っている情報を生かして,群馬弁護士会も,
たとえば昨年2月の豪雪被害や本年の前橋・伊勢崎突風被害で被災者支援活動を行ってまいりました。

そして,私も,関東弁護士会連合会の災害対策PTの委員として,先日,茨城県弁護士会に伺い,
日弁連が持っている情報(弁護士会としてどう動くべきか等)をお伝えしてきました。
茨城県は東日本大震災の被災地でもあり,その活動は素晴らしいものでした。
今回もいち早く災害対策本部を設置し,会員一丸となって取り組んでいらっしゃいます。
私が話した内容も,実際は既に被災地の先生方は重々承知のことばかりだったと思いますが
少しでもお役に立つ部分があれば幸甚です。

災害は一瞬で「当たり前の暮らし」を奪っていくものですが,その後の復興は一瞬でできるものではありません。
インフラの復旧は,「生活」「地域」の復旧・復興とは別だからです。

弁護士にしかできない被災者支援も多数あります。
息の長い活動になると思いますが,私としても,できるだけのお手伝いができればと考えています。