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インターネット掲示板への削除依頼・発信者情報開示請求(再掲)

数多くのご相談を受けています。

インターネットの掲示板で悪口を書かれて名誉が毀損されたとか,プライバシーを侵害されたとか,そういったご相談も数多く受けています。こういった相談では,(1)削除を求めたいということと,(2)投稿者を突き止めたい,(3)投稿者に損害賠償請求したいということの3点が問題になります。
が,これらは時間との勝負です。1日でも早く動き出さなければなりません。

プロバイダ発信情報保管期間について

投稿者が誰かを突き止めるためには,IPアドレス(インターネット上の住所のようなもの)とタイムスタンプ(年月日と正確な時刻)から契約者の住所氏名等(発信者情報)を引っ張ってこなければなりませんが,プロバイダの発信者情報の保管期間は長くて半年,大手プロバイダの場合は3ヶ月が目安となっているからです。そして,プロバイダに対する契約者の住所氏名等の開示依頼(「発信者情報開示請求」といいます。)は,すぐにできるというものではありません。

開示請求の第一段階

悪口などが記載された掲示板の運営会社等に対し,最低限,IPアドレスとタイムスタンプの開示を求めなければならないのです。
このIPアドレス掲示板の運営会社によっては,ガイドラインに従って開示請求をすると,すぐに任意に開示してくれるところもありますが,
「発信者情報開示仮処分」という裁判所の手続を踏む必要がある場合もあります。この仮処分も,申し立ててすぐに命令が出るわけではありません。
東京地裁の場合,債権者審尋(裁判官が削除を求める人(の代理人弁護士)から話を聞く手続)が必ず行われ,その後,申立書が相手方に送付されます。その際,双方審尋(こちら側と運営会社側双方の言い分を聞く手続)の日程が調整され,相手方に審尋のための準備期間も与えられた上で,双方審尋が行われ,その後に決定が出る,という流れです。
結局,申立てから仮処分命令の発令まで,2週間程度は覚悟した方がいいかもしれません。
なお,仮処分の場合,1つの投稿記事について10万~30万円程度のお金を法務局に供託する必要があります。
そして,命令が出て,運営会社からIPアドレスやタイムスタンプなどの回答があるまでに数日。
(ここでなかなか出してもらえないようなら,間接強制といって,「回答してくれるまで1日あたり○円支払え」という内容の申立てをする必要があります。)

開示請求の第二段階

回答を得て,やっとIPアドレスとタイムスタンプが開示され,それを見て,プロバイダに対して,契約者の住所氏名等発信者情報開示を求めることができるのです。プロバイダ相手の開示請求は,ガイドラインに基づく請求(任意)という方法も一応残されていますが,結果的に開示されることはあまり考えられません(もっとも,ドコモなどは,ガイドラインに基づく発信者情報開示を受けると,ログを任意に保管期間を延長してくれます。)。
そこで,ガイドラインに基づく請求で不開示となった場合や,あるいはガイドラインは時間の無駄だからということで直接,発信者情報開示請求訴訟を提起する必要があります。
発信者情報開示請求と同時に,あるいはその前に,プロバイダに対してログの保存を求めておくことも忘れずに行わなければなりません。
以上のこと,つまり掲示板運営会社に対する発信者情報開示と,その後のプロバイダに対する発信者情報開示を,投稿から3ヶ月以内にやらなければならないのです。
ログを保存してもらった上で,裁判を提起した後は,一般の裁判と同様の流れになります。
発信者情報開示請求訴訟提起後1ヶ月半程度の後(裁判所の夏期休廷期間等をはさむと,2ヶ月後などもざらにあります。),第一回口頭弁論期日が開かれ,そこから1ヶ月に1度程度の間隔で裁判が続行されます。そして,勝訴などで契約者の情報を知ることができたら,ようやく,やっと,契約者に対する警告書の発送や損害賠償請求等を始めることになるのです。
もっとも,契約者=投稿者とは限らないので,そこもしっかり検討しなければなりません。

気をつけなければいけないこと

なお,削除を求める場合も,気をつけなければならないことがあります。
投稿を削除してもらった場合,一緒にIPアドレス等も消されてしまうことがあるのです。
ですから,「これは大変だ。すぐに削除を求めよう。」と闇雲に削除を求めてしまい,それが認められてしまったら,削除はしてもらえたが,誰が書いたかは永遠に闇の中,ということもありうるのです。
以上のように,「削除」とか「投稿者を突き止める」というためには,結構な手間暇がかかる反面,時間的な余裕はありません。
自分の悪口が書かれているのを,投稿の数ヶ月後に知ったということもあり得ると思います。
そういう場合でも,削除を求めるとか,発信者情報の開示を求めたり(プロバイダも,3ヶ月経過後全て全部消しているわけではないようです),といったことも考えられますので,まずは一刻も早くご相談ください。